最低賃金引上げはいつから?都道府県別リストと改定に伴う飲食店の対策と注意点

最低賃金引上げに伴う飲食店オーナーとスタッフの注意点と対策

2024年の秋、ふたたび最低賃金の引上げが予定されています。
そしてその想定金額は上がり幅が50円以上UPとされており、過去最高レベルの引上げです。
各都道府県別の現在の最低賃金・引き上げ後の最低賃金・引き上げ予定日をリストにしておりますので、こちらからご覧ください。
なぜ毎年のように最低賃金の引上げが続いているのか、その背景と飲食店オーナーが知っておかなければならないこと、また、そこで働くスタッフが知っておくべき注意点をまとめます。

各都道府県別の最低賃金リスト

まず、先に各都道府県の現在の最低賃金と、今後引上げられた際の予想最低賃金のリストを載せておきます。あらかじめ、自分の県の最低賃金がいったいいくらになるのかを確認しておきましょう。
※2024年の各都道府県の最低賃金の引き上げ価格が確定しましたので、更新しています。

都道府県現在の最低賃金発効年月日引上げ後
最低賃金価格
引上げ予定日
北海道
北海道960令和5.10.0110102024年10月1日
東北
青森県898令和5.10.079532024年10月5日
岩手県893令和5.10.049522024年10月27日
宮城県923令和5.10.019732024年10月1日
秋田県897令和5.10.019512024年10月1日
山形県900令和5.10.149552024年10月19日
福島県900令和5.10.019552024年10月5日
関東
茨城県953令和5.10.0110052024年10月1日
栃木県954令和5.10.0110042024年10月1日
群馬県935令和5.10.059852024年10月4日
埼玉県1028令和5.10.0110782024年10月1日
千葉県1026令和5.10.0110762024年10月1日
東京都1113令和5.10.0111632024年10月1日
神奈川県1112令和5.10.0111622024年10月1日
北陸
富山県948令和5.10.019982024年10月1日
石川県933令和5.10.089842024年10月5日
福井県931令和5.10.019842024年10月5日
甲信越
新潟県931令和5.10.019852024年10月1日
山梨県938令和5.10.019882024年10月1日
長野県948令和5.10.019982024年10月1日
東海
岐阜県950令和5.10.0110012024年10月1日
静岡県984令和5.10.0110342024年10月1日
愛知県1027令和5.10.0110772024年10月1日
三重県973令和5.10.0110232024年10月1日
関西
滋賀県967令和5.10.0110172024年10月1日
京都府1008令和5.10.0610582024年10月1日
大阪府1064令和5.10.0111142024年10月1日
兵庫県1001令和5.10.0110522024年10月1日
奈良県936令和5.10.019862024年10月1日
和歌山県929令和5.10.019802024年10月1日
中四国
鳥取県900令和5.10.059572024年10月5日
島根県904令和5.10.069622024年10月12日
岡山県932令和5.10.019822024年10月2日
広島県970令和5.10.0110202024年10月1日
山口県928令和5.10.019792024年10月1日
徳島県896令和5.10.019802024年11月1日
香川県918令和5.10.019702024年10月2日
愛媛県897令和5.10.069562024年10月13日
高知県897令和5.10.089522024年10月9日
九州
福岡県941令和5.10.069922024年10月5日
佐賀県900令和5.10.149562024年10月17日
長崎県898令和5.10.139532024年10月12日
熊本県898令和5.10.089522024年10月5日
大分県899令和5.10.069542024年10月5日
宮崎県897令和5.10.069522024年10月5日
鹿児島県897令和5.10.069532024年10月5日
沖縄
沖縄県896令和5.10.089522024年10月9日
都道府県別の現在の最低賃金価格と発行年月日、そして一律50円の引上げがあった際の参考価格リスト

こう見ると最低賃金も高くなりましたね!※ちなみに余談ですが私がアルバイトをしていたころは、また時給700円くらいでした(笑)。

①最低賃金引き上げの背景

2024年の秋から、全国一律で最低賃金が50円程度引き上げられることが決定しました。これにより、飲食店をはじめとする多くの業界が影響を受けることが予想されます。
飲食店のオーナーからの悲鳴が聞こえてくるようですが、そもそもなぜ毎年最低賃金の引上げが続いているのでしょうか?その背景としては、以下のような理由があります。

  1. インフレーション対策:物価の上昇に伴い、最低賃金を引き上げることによって、労働者の生活水準を維持しようとしている。
  2. 労働市場の変化:人手不足や高齢化社会など、労働市場の変化に対応するため、賃金引上げが必要とされている。
  3. 格差是正:経済的な格差を縮小し、労働者の生活の安定を図るため。
  4. 国際的な圧力:グローバルな経済競争において、「日本の賃金水準が低すぎる」と評価されることがないように調整している。

これらの要因が絡み合い、毎年の最低賃金の引上げが続いている状況なのです。

それでは、実際にお店のオーナーや働くスタッフはどんなことに注意すればいいのでしょうか?
それぞれ見ていきましょう。

②飲食店オーナーが注意すべきポイント

飲食店の店長がお店のテーブルでパソコンを見ながら困った顔をしているところ

飲食店のオーナーが注意すべきポイントは大きく3点です。
①労務管理の見直し
②人件費の増加に伴うコスト管理の見直しと販売価格の見直し
③従業員とのコミュニケーション

これからそれぞれ各項目ごとに確認していきます。

労務管理の見直し

最低賃金の引き上げに伴い、従業員の給与計算が適切に行われているかを確認する必要があります。
主に確認が必要な点は以下です。

  1. パートアルバイトの現在の時給が最低賃金を超えているか
  2. 求人広告で募集している時給が最低賃金を超えているか
  3. 高校生採用で時給に差を設けている場合、その時給が最低賃金を超えているか
  4. パートアルバイトの給料計算時に各スタッフの給与の計算科目の確認
  5. スタッフの雇用保険の適用要件の確認・社会保険の加入要件の確認

例えば、お店で現在張り紙で求人募集をしていたり、求人広告サイトで募集をしている場合、その時給が最低賃金の引上げにより、最低賃金よりも低くなってしまっていないか、注意が必要です。

また、最低賃金が上がった後に求人広告をかける際、時給を50円上げて求人をかけなおすことがよくありますが、その際に現在働いてくれているパートアルバイトの時間給がその求人広告で募集している時給よりも低くなってしまわないように気を付けましょう。

人件費の増加に伴うコスト管理の見直しと販売価格の見直し

賃金のアップによる人件費(コスト)増加を考慮し、お店の数字の見直しをする必要があります。

  1. お店の商品の販売価格の見直し
  2. 商品の原材料費の見直し
  3. 値上げをすることや、原材料費を下げることが難しい場合は、他の経費の見直しも必要

近年、インフレを背景に原材料費の高騰と人件費・その他経費の高騰が続いています。この状況の中で、店舗経営者が自分のお店の数字を確認・見直しすることなく経営を続けたとしましょう。そうすると数年もすればみるみるお店の利益額が減ってしまいます。
なかなか値上げに踏み切ることができない店舗経営者も多くいらっしゃいますが、販売価格の見直しを適切に行っていかないと、いつも通りの営業をしているだけなのでどんどん手元に残る利益が少なくなってしまう恐れがありますので、定期的な見直しが必要不可欠です。

【補足】販売価格の見直しというと、ただ値上げをするというイメージを持ってしまいがちですが、メニュー表一つをとってもアイデアひとつでやり方はいくらでもあります。メニュー表をどのような構成で組み立てるかによって、商品のオーダー率は大きく変わります。
例えば、商品のABC分析を行ってお店の勝ち筋の商品(原価率・提供速度・お客様満足の高い商品)をしっかりと見つけ(特に見つからない場合は新しく作りましょう)、その商品がお客様に一番気づいてもらいやすいところに設置・さらにその商品の魅力が伝わるようにしてあげるだけでも、お店の数字は劇的に改善します。

従業員とのコミュニケーション

賃金改定に伴う、店舗での対応や方針を丁寧に説明し、従業員が抱く不安を解消してあげる必要があります。また、最低賃金引き上げによる店舗の負担を軽減するためのお店で取り組んでいく工夫や提案を話し合う場を設けてあげると良いでしょう。

③働くスタッフが注意すべきポイント

飲食店のスタッフがお店で自分のタイムカードを確認しているところ

さて、それでは飲食店で働いているパートアルバイトなどのスタッフが、最低賃金引上げの際に注意すべきポイントを挙げていきます。飲食店のオーナーは忙しくされている方も多くいらっしゃいます。思わぬミスや見落としもあるかもしれません。しっかりと確認する準備をしておきましょう。

給与明細の確認と理解

自分の賃金が適切に引き上げられた場合、スタッフは以下の点に注意して給与明細を確認することが重要です。以下の点を確認することで、賃金が正確に支払われているかどうかを確実に把握できます。

  1. 基本給の変動:新しい最低賃金が適用され、基本給が適切に引き上げられているか確認します。
  2. 手取り額の変化:社会保険料や税金の控除が増えることで、手取り額が減少する可能性もあります。特に、控除の内訳をよく確認しましょう。
  3. 残業代や手当:残業代や深夜手当などが、きちんと最低賃金引上げ後の時給をベースに計算されているのかどうかを確認することが必要です。
  4. 控除項目のチェック:健康保険、厚生年金、雇用保険、住民税など、各控除項目が正確に反映されているかを確認します。

勤務時間とシフトの管理

シフトの変更や労働時間が正確に反映されているかを確認することが大切です。これは、最低賃金が上がるという理由が無かったとしても、自身が働いた労働時間は手帳などにメモを取って給与明細の労働時間と一致しているかどうか、確認することをお勧めします。特に、残業が増える可能性がある場合は、事前に確認し、不当な労働が発生しないよう注意しましょう。

相談窓口の利用

最終手段として、何か疑問や不安がある場合、店長や経営者に相談するだけでなく、労働基準監督署や労働相談センターなどの外部の相談窓口を活用することも一つの方法です。不当な労働や環境を強いられている状況であるならば、経営者に相談したところで火に油を注ぐ可能性すらありますので、注意しましょう。

④最低賃金引き上げがもたらす可能性と対策

コストが増加することに対する対策と具体例

飲食店においては、最低賃金の引き上げにより人件費が増加するため、利益率の見直しが必須です。効率的なオペレーションの導入や、デジタル化によるコスト削減などの対策を検討しましょう。
以下に、売り上げを増加させるための対策、お店の経費(変動費)を下げるための対策をそれぞれ10個ずつ箇条書きにしてみました。「あ!これはすぐに取り組めそうだな」というものから1つずつ取り組んでいきましょう。あなたのお店の長所を伸ばす形が一番やりやすく効果的な方法かもしれませんね。

売上を増加させるための具体策

  1. メニューの見直し: 利益率の高いメニューを増やし、価格設定を最適化
  2. SNSマーケティングの強化: インスタグラムやTikTokでのプロモーションを積極的に行う
  3. リピーター向けの特典: ポイントカードや会員限定割引でリピート率を向上
  4. 新メニューの開発: 季節限定メニューやトレンドを取り入れた新メニューを提供。
  5. スタッフ教育の強化: 接客スキルを向上させ、顧客満足度を高める。
  6. デリバリー・テイクアウトの充実: 多様なオプションを提供し、外部需要を取り込む
  7. イベントの開催: 特別なディナーイベントやワークショップを実施して集客を図る
  8. 口コミサイトの活用: 良い口コミを促進し、評価を高めるための戦略を実行
  9. 店舗のリノベーション: 内装をリフレッシュし、より魅力的な空間を提供
  10. 地域との連携: 地元の食材を使ったメニュー開発や、地域イベントへの参加で地域密着型の営業を展開

経費(変動費)を下げるための具体策

  1. 仕入れ先の見直し: より安価で質の良い仕入れ先を探す
  2. 食材のロス削減: 在庫管理を徹底し、廃棄を減らす
  3. メニューの簡素化: 人気のないメニューを削除し、食材の無駄を減らす
  4. 水光熱費の節約: 節電やガスの使用を節約する
  5. 労働時間の最適化: 効率的なシフト管理で人件費を削減、またスキルアップやオペレーション改善による人件費の削減
  6. 使い捨て用品の見直し: リサイクル可能な用品を採用してコスト削減 ※最近ではエコ箸の利用も復活してきました
  7. 調理技術の向上: 効率的な調理で食材コストを減らす
  8. バルク購入: 大量購入によるコスト削減
  9. 価格交渉: 仕入れ先との価格交渉を定期的に行う
  10. デジタル化: ペーパーレス化や自動化で管理コストを削減

スタッフのモチベーション維持も大切

賃金の引き上げは、スタッフのモチベーション向上にもつながりますが、これを機に、職場環境の改善や福利厚生の充実など、長期的な働きやすさを追求することも重要です。「従業員満足なくして顧客満足なしという」という言葉にもあるように、従業員の満足度は、そのままお客様への接客に波及します。経営者とスタッフという雇い・雇われの立場以上に、【一緒に働く仲間】として良いコミュニケーションを目指していきましょう。

⑤まとめ: 最低賃金引き上げを機に、働きやすい環境を整えよう

飲食店の店長がスタッフ3人と仲良く話し合いをしているところ

最低賃金の引き上げは、飲食店にとって大きな転換期です。
オーナーもスタッフも、この機会をポジティブに捉え、働きやすい環境を整えることで、店舗全体の生産性向上を目指しましょう。業界の変化に柔軟に対応しながら、より良い職場を作っていくことが求められます。ぎりぎりになって慌てることの無いように、あらかじめ準備と対策を行っていきましょう。

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